特別受益
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一部の相続人が多額の贈与を受けていた時には?
“特別受益の持ち出し”で相続分を算定することが可能
特別受益とは、相続人が被相続人から受けた特別な利益のことをいい、たとえば、生前に被相続人から婚姻や養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた場合や、相続開始後に遺贈を受けた場合などがこれにあたります。
一部の相続人がこうした利益を受けている場合に、これを考慮せずに相続財産を分配すると不公平が生じてしまいます。そこで、各相続人間の公平を図るため、民法では特別受益を考慮したうえで具体的相続分を算定する「特別受益の持ち出し」という制度を設けています。
特別受益の対象
■遺贈
遺贈とは、遺言書によって財産を渡すことをいいます。
遺贈によって受け取った財産は、すべて特別受益の対象となります。
■婚姻のための贈与
結婚に際しての持参金、結婚後の生活を支援するための贈与などが特別受益の対象となります。
※挙式費用や結納金などは特別受益にあたらないのが一般的です。
■養子縁組のための贈与
養子縁組に際して、実親が持参金を贈与した場合、特別受益の対象となります。
■生計の資本としての贈与
事業を始めるための開業資金、住宅を購入するための住宅資金、居住用の不動産、私立の医科大学の学費など、扶養の範囲を超える金銭援助は特別受益の対象となります。
■生命保険金
生命保険金は受取人の固有の財産であると考えられるため、特別受益にはあたらないのが原則です。
しかし、共同相続人の一人だけが生命保険金を受け、しかもその金額が相続人間において著しく不公平とみられるほどに高額である場合は、特別受益に準じて持ち戻しの対象になる可能性があります。
特別受益があった場合の財産の分け方
一部の相続人に特別受益があった場合、すでに財産の一部が前渡しされていたとみなして、具体的相続分を算定する際に、特別受益の価額を加えて算定することになります(特別受益の持ち戻し)。
特別受益の計算例
特別受益がある場合の相続分の計算方法は次のとおりです。
○特別受益を受けた人
(相続財産+特別受益額)×法定相続分-特別受益額=相続分
○特別受益を受けていない人
(相続財産+特別受益額)×法定相続分=相続分
<具体例>
相続人が子Aと子Bであり、相続財産が3,500万円で、相続人Aが被相続人から生前に住宅購入資金として1,000万円の贈与を受けていた場合。
■(特別受益を受けた)相続人A
(3,500万円+1,000万円)×1/2-1,000万円=1,250万円
■特別受益を受けていない相続人B
(3,500万円+1,000万円)×1/2=2,250万円
特別受益を考慮せずに相続させたい時は?
被相続人の意思により持ち戻し免除が可能
被相続人が特定の相続人に対して、相続分とは別に財産を渡したいという意思があった場合、他の相続人の遺留分を侵害しない範囲で特別受益の持ち戻しを免除することが可能であり、これを「持ち戻し免除の意思表示」といいます。
この意思表示には特に形式に決まりはないため、遺言書という形で残しておかなくても、口頭での意思表示、あるいは黙示の意思表示でも認められる場合があります。
しかし、無用な相続トラブルを防止するためにも、持ち戻し免除の意思表示は遺言書などで明確に行っておくことが望ましいでしょう。
※持ち戻し免除の意思表示は、いつでも撤回が可能です。
なお、被相続人の意思以外にも、相続人全員が特別受益を考慮しないと認めた場合にも、持ち戻し免除となります。
持ち戻し免除の意思表示の推定
改正相続法により、婚姻期間が20年以上の法律上の夫婦の間で居住不動産(配偶者居住権を含む)が遺贈や贈与された場合は、その遺贈や贈与については持ち戻し免除の意思表示があったものと推定するという規定が創設されました。
これにより、上記要件を満たす遺贈や贈与については特別受益の対象として扱われないため、残された配偶者に対してより多くの財産を渡すことが可能となります。
特別受益に関するご相談は弁護士まで
被相続人から見れば、遺言を作成する場合にも特別受益についても考慮しておかなければ、持ち戻しや遺留分によって、結果的にはご自身が望まれた形での相続が実現しない恐れがあります。
他方で、相続人から見れば、遺産分割に際してどの行為が特別受益にあたるか、その金額はいくらかという点の判断は難しく、特別受益を巡って相続人の間でトラブルが生じる可能性も高いといえます。
こうしたトラブルを避けるためにも、特別受益についてのお悩みや疑問は、K・Gフォート法律事務所へお気軽にご相談ください。ご相談者様お一人おひとりの状況に合わせて、適切なアドバイスをさせていただきます。